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呼び出す女

「ね、いつまでも泣いてないでケーキ食べたら?」

新年早々失恋したとかで、朋子は今年も辛気臭い。

悪い子じゃないのだけれど、せっかくの休みに呼び出されて、

いつまでもめそめそ泣かれたんじゃあ、さすがにちょっと鬱陶しい。

ルックスだって悪くないし、性格も優しいのだから、

彼女が毎度振られる理由は、この辛気臭さ以外に考えられない。

昔はそんなでもなかったのに。

全ては、朋子が4年前にほんの少し付き合った神経質そうな男のせいだと思う。

朋子と男は出会ってすぐに炎が燃え上がった、いわゆる、大恋愛だった。

男は朋子のバースデイに、当時女性に人気のあった、

かなり高価なブランドリングをプレゼントした。

けれど、しばらくすると、男には妻と子がいることが分かった。

根が真面目な朋子は悩み、結局男との別れを選んだ。

けれど、その後も、もらった指輪をはずさなかった。

そして、その後、朋子はロクな恋愛をしていない。

二股をかけられたり、貢ぐだけ貢いで捨てられたり、

今度こそ運命の相手かも?と思った男が、実はホモだった

なんていう笑えない恋愛まで経験した。

最近私が凝っている風水によると、過去の悪い出来事に関わる物は、

皆、“悪い気”を発しているらしい。

「ね、朋子、やっぱりそんな指輪してるのがよくないんじゃない?」

突然何を言い出したのか?という目で朋子が私を見た。

「別れた男に貰った指輪なんていつまでもはめてるからロクなことがないのよ!」

とちょっと語気を荒げてみる。

こういう時は、ちょっと強気に言うのが効果的なのだ。

私はそのまま、これまで思っていたことを一気にまくし立て、

指輪を売り払うよう説得をした。

もうこれ以上、朋子の泣き顔を見たくないし、

呼び出されて泣き言に付き合わされるのもイヤだったのだ。

最初は頑なだった朋子も、珈琲を飲み終える頃にはすっかり

指輪を手放す気になってくれた。

朋子の気持ちが変わらないうちにと、

私たちはその足でブランドリサイクル店に向い、

「なんだかすっきりしたわ」という朋子が手にした現金で、

美味しい焼肉を食べに行った。

そして、その後……

朋子はまるで人が変わったように明るくなり、

新しい恋人とラブラブの毎日を送っている。

……なんていうことはないけれど、少しづつ、でも、確実に変わりはじめている。

少なくとも、あの辛気臭さはもう漂っていない。

そして、先日は、

<バイト先の先輩が何かと親切にしてくれて、最近ちょっと意識してる>

と、ハートの絵文字つきのメールをよこした。

朋子の変化があの指輪のせいかどうか、本当のところはよくわからないけれど、

思い切って手放したことで、気持ちを切り替えられたことだけは間違いない。

これで、もう、朋子に突然呼び出されることもないだろう。

そう思っていた矢先に携帯が鳴って……

<ねえ聞いて!!どうしよう?先輩に告白されちゃった!!!>

朋子からびっくりマークがたくさん並んだメールが届いた。

これからもやっぱり、朋子には突然呼び出されそうだ。

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