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明日のわたし

ショートストーリー 明日のわたし

未来が分かるとか、未来が見える、というわけではないのだけれど、
私には、明日の自分に関するちょっとした予知能力がある。

始まりは幼稚園の頃のこと。

運動会の前の夜、ぐっすりと眠っているとどこからともなく声が聞こえた。

「転んでもすぐ起きて走れば一番になれる」

当日は、本当に、スタートしてすぐ転んでしまい、
泣き出しそうになったときにあの声を思い出した。

慌てて起きて走り出し、1人目を追い抜いたところで、
前を走る子の靴が脱げた。

それでも1番の子を抜くのは無理だと思ったら、
なんと、その子がゴール目前で転んだのだ。

結局、私は、夜中に聞いた声の通り、転んでも1番になった。

その後も、発表会の前の日だとか、友達とけんかしてしまった夜だとか、
明日のことを心配しながら眠りについた夜には必ず、
どこからともなく声が聞こえて、どうするべきかを示してくれた。

いつしか私は、その声の主は、「明日のわたし」だと信じるようになった。

あ、もうこんな時間……

明日は大事な初デートなのに、夜更かししてはお肌に悪い。

でも、何を着ていけばいいんだろう?
やっぱりスカートのがいいかな?
髪の毛はどうしよう?
先輩、お化粧する子はきらいかな?でも、リップくらいは……
うーん……どうしよう?

「先月買ったスカートがかわいいわよ、
明日は暑くなるから髪はポニーテールで、
あなたはかわいいんだから、お化粧なんていらないわ。
でも、ピンクのリップだけならいいかもしれない」

娘はときどきうなされながら、はっきりとした寝言を言う。

幼稚園の頃、一度寝言に答えてやったら、安心した顔で眠ったので、
それからもつい、答えてしまうようになった。

でも、娘ももう中学生だし、
そろそろ寝言に返事するのはやめないといけないかしら?


このショートストーリーは、大阪の時計店【ウオッチコレ】メールマガジン『ブリリアントタイム』に掲載されています。

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