18。はじめてのお泊まり

彼女は目にいっぱい涙をためて、堪えきれずにこぼしだしました。
彼女の視線の先には、先生に抱かれながら、同じように涙をこぼす女の子。

今日は幼稚園のお泊りキャンプの出発日です。
たかが一泊とはいえ、親元を離れて眠るのは
はじめての子どももたくさんいます。

泣いている彼女は、私の友人、
やはり、娘と別れて過ごす夜ははじめてなのだそうです。
華奢で、他の子に比べてかなり小さい彼女の娘は、人一倍甘えん坊です。
そんな娘を思う気持ちが、大粒の涙になってしまったのでしょう。

それに比べて、私の娘といったら、
おともだちとはしゃぎ回って、私の方を振り返りもしません。
なんてあっさりしているのでしょう。^-^; アハハ…
そんなふうに考えていると、
講堂中に響くような泣き声が聞こえてきました。

振り向くと、ママの足にすがりついたまま、泣き叫ぶ男の子がいました。
先生がどんなに呼んでも聞こえていません。

男の子がしっかりと掴まる足を引きずりながら、
ママが辛そうに言いました。
「朝から少し体調が悪いんです。」

あれほど嫌がっている様子を見ると、
体調の悪さは精神的なものかもしれません、
その子のママにも、担任の先生にも、同情しました。

集合時間から30分が過ぎ、ようやくバスに乗ることになりました。
ママたちは観光バスの周りを囲んで、我が子の座席を探します。

真夏の強い日差しと、アスファルトの照り返し、バスの熱気が重なって、
それはもう、大変な暑さです。
それでも、ママ達は、バスを見送るまで帰ろうとしません。

ようやくバスが出発したとき、ママたちは皆、汗だくでした。

はじめてのお泊り。
大騒ぎしたのは、子どもたちではなくママ達の方でした。(笑)

そして、翌日、
今日も記録的に暑い日です。
バスの到着予定時間よりも15分早く園に行くと、
炎天下の道路ぎわに立ち、心配げに大通りを覗きこむママの姿がありました。
もちろん、冒頭の彼女です。
いったい、どれくらい前から待っているのでしょう?
昨日の夜は、心配で眠れなかったのではないかしら?

お迎えのママたちが、次々に集って来ました。
子どもたちは、もうじきここに戻ってきます。

日焼けした顔に満面の笑みを浮かべて、
昨日より少しだけ成長して。^^

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