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30.あなたに会いたくて

稚園を卒園してはや1年。
この春には2年生になろうとしている娘には、新しい出会いもたくさんあり、
素敵なボーイフレンドもできました。

それでも、相変わらず、娘の心を鷲掴みにしているのは、
幼稚園時代からずっと好きだった“こうきくん” 。
卒園して以来、ただの一度も会っていないのに、変わらぬ思いを持ち続けています。

今日は、娘の習っている新体操の発表会がありました。
郊外の大きな体育館に、複数の教室から大勢のちびっ子たちが集まります。
その中の一人に、なんと、こうきくんの妹もいたのです。

彼女に気付いたのは、大勢の保護者と子供たちでごった返す帰りがけの出入り口。
妹がいるということは、ママとこうきくんも来ているはずと、
私は必死であたりを見回し、とうとう、彼を見つけました。

娘がどんなに喜ぶだろうと、そこに居るはずの娘を振り返りました。
ところが、娘の姿が見えません。

近くに居た娘と仲良しのお友達に訪ねたり、辺りのママたちに訪ねたりして、
夢中で娘を探しました。
ようやく娘を見つけ、こうきくんが居ることを告げると、荷物をパパに押し付けて、
二人でこうきくんを探しました。

けれど、こうきくんの姿はもう、どこにも見つかりません。

「あーあ、いなくなっちゃったね」
と娘を見ると、今にも泣き出しそうな顔で、いつまでも周りを見回しています。
仲良しのお友達も、大きな声で呼びながら、こうきくんを探してくれました。

人並みは、途切れることなく出口から駐車場へ流れていますが、
どんなに探してもこうきくんは居ませんでした。
人並みに逆らって歩く娘に、強い風が吹きつけて、大きなリボンをなびかせています。

娘はとうとう泣き出してしまいました。

そんな娘の肩を抱いたとき、向こうからこうきくんのママと妹が来るのが見えました。
駆け寄って、こうきくんのことを聞くと、先に車に戻っているといいます。
涙を止めた娘と一緒に、彼の居る車へと向いました。

一年ぶりのこうきくんは、娘の顔を見るやいなや、照れくさそうな笑みを浮かべ、
シートに隠れてしまいました。
娘の恋心をよく知っている彼のママは、半ば怒り気味になって、
彼に顔を出すように言ってくれますが、こうきくんはクスクス笑いをしたまま、
顔を見せることはありませんでした。

それでも、娘と彼の間では、ちゃんと目が合っていたのでしょうか、
突然パッと顔を輝かせた娘が、声を立てて笑い出しました。

車のドアを閉じてしまうと、スモークを張った窓ごしに、
彼がこちらを見て笑っていました。
娘と彼は、身振り手振りで何か会話していたようです。
娘は大きく手を振って、「こうきー」と叫びながらバイバイしました。

この上なく幸福そうで、満足げな娘の笑顔を見て、私も心からホッとして、
とても嬉しくなりました。

なりふり構わずこうきくんを探しまわった私の態度は、
ママとしてあまり格好の良いものではありませんでしたが、
あの時の私は、ママというよりも、真剣な恋を応援する親友の気持ちでした。

もちろん、大勢のママたちが居る中で、思わず取り乱してしまったことを、
後から少し恥ずかしく思ったのは言うまでもありません。

けれど、これからもたくさんの恋を経験するであろう娘を、
私はずっと、こんなふうに応援してしまうことでしょう。

大好きな人に会いたいという真剣な思いは、子供であれ、大人であれ、
同じ女性として、応援せずにはいられないものですから。

あやちゃん、今日は良かったね!
またこうきくんに会えるといいね!

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