卒園式の朝は、少し肌寒いけれど、よく晴れた青い空が綺麗でした。
卒園、の意味がどれくらいわかっているのか、
いつもどおり制服に着替え、少し急かされながらバスに乗る娘は、
そんな朝が今日で最後になることにも、何の感慨もないようでした。

ところが、ブラックフォーマルで式場に向かった私が見た娘は、
両目を真っ赤に泣きはらしているではありませんか。

どうやら、「卒園」の意味を彼女流に理解したようです。
「卒園というのは、もう、こうきくんと逢えなくなること」と。

娘の大好きなこうきくんは、笑顔の可愛いちょっと甘えん坊の男の子。
娘によると、「かわいくて、かっこよくて、おもしろい」のが魅力だとか。

娘のアプローチは、この上なく積極的で、
自分はこうきくんが好きだとクラス中にいいふらし、
手紙を書いたり、プレゼント(自分で工作したもの)を贈ったりしました。

先生のお話では、彼の方もまんざらではないようで、
テレながらも、それなりに相手をしてくれていたようです。

それでも、やっぱり、オマセな女の子とオクテな男の子は違います。
最後の日と悟って、少しでもこうきくんの近くにいようとする娘の、
抱きつかんばかりの勢いに、彼はもう、逃げ回るばかり。

娘はどんどん悲しくなって、涙を流して、
それでもまだ追いかけまわすのです。(^.^;…

娘の気持ちはよくわかりますが、この情景はもう、吉本新喜劇、
可哀想にと思いながらも、私は笑ってしまいました。

こうきくんのお母さんや妹までが協力してくれて、
ようやく一緒に写したこうきくんとのツーショット。
その大切な一枚の中で、娘は泣き顔でこうきくんを見つめ、
こうきくんは、テレた顔でよそを向いています。

写真を撮り終えると、こうきくんはまた逃げ出し、娘は追いかけまわしました。
それでも、途中で、彼女が2番目に好きな「しゅうやくん」と写真を撮るよ、
と声をかけたときには、ちゃっかり写りにやってきたことが、
可笑しくって仕方ありませんでした。

一途だけれど、ちゃっかりしているオマセな娘は、
これからどんな恋を重ねて、成長していくのでしょうか?