おかしな時代

「本当に気づかないんだってば!」

「そんなこたぁないだろう?
いくらなんでもお前が隣にいたら絶対に気づくって。」

「この間なんて、若い男とエレベーターでバッタリはち合わせしちゃってさ、
俺、ちょっとしたいたずら心で、『こんばんは』って挨拶したのさ。
そしたら、その男、どうしたと思う?」

「どうしたんだよ?」

「携帯ピコピコやりながら、『あ、どーも』とか言うんだぜ。
ちっとも驚きやしないで。」

「ええっ!!」

「うそ~!!」

「お前らが驚いてどうすんだよ!(笑)」

「だよな……」

「そうね……」

「でもさ、つくづく時代も変わったもんだよなぁ。」

「うん……変わったな。」

「ええ、変わったわね……」

「少し前までは俺らの顔を見るとみんな驚いて逃げたのになぁ……」

「うん、逃げたよな、一目散に」

「ところが今じゃこれよ……」

そう言って猫娘が取り出したのは、コスプレパブのアルバイト募集チラシ。

「『君かわいいね、ここで働かない?』って渡されちゃった」

「おっ!可愛い子がいっぱいいるねぇ」

チラシの写真に反応したのは、挨拶しても驚かれなかったというのっぺらぼう。

「おかしな時代だよなぁ」

傘お化けがそう言うと、猫娘が長い爪にマニキュアを塗りながら、

「でも、誰にも気にかけられず好きなように生きられる
いい時代なのかもしれないわよ。」

と言った。

長い長い時間を生きているお化けたちにとって、
現代は何とも不思議な時代のようだ。

関連記事

  1. 評判の嫁

  2. ショートストーリー「窃盗犯」

    窃盗犯

  3. トパーズ

  4. その人

  5. あわてんぼう

    あわてんぼう

  6. ショートストーリー 流れ星

    流れ星

  7. ショートストーリー「終点」

    終点

  8. 幸運の女神

    幸運の女神

  9. ショートストーリー「永遠の3秒」

    永遠の3秒

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP