会社の同僚6人で初詣に行こうという話になった。

お給料も仕事内容も満足とは言えないけれど、
社内の人間関係だけは自慢できるのが私の会社だ。

学生時代の友人は、せっかくの休みまで
同僚と会うなんて考えられないと笑うけれど、
私にとっては、ごく、自然なことだった。

それに……

私は同僚の中の一人、藤堂くんにずっと片思いしていた。

待ち合わせは、大晦日の23時。

まだ明るいうちに入浴を済ますと、携帯メールが着信していた。

〈ユーコ、ごめん!初詣行けなくなっちゃった^^;
カレシと仲直りしたから一緒にスノボ行ってくるヨ。
みんなによろしく言っといて!〉

やれやれ。
3日前は、彼氏と

はもう別れる!なんて泣いてたけれど、
仲直りなら良かった良かった。

20時をまわって、髪を結い始めると、今度は携帯がなった。

「ユーコ?今日の初詣なんだけど……私、ちょっと無理みたい、
なんか、おなかの調子がよくなくて……
あっ!また……、ごめん!そーゆーことでよろしく!」

切れてしまった携帯に向かって、「お大事に」とつぶやいた。

でも、これで女性で参加するのは私だけということになる。

藤堂くんたち、がっかりしてしまうだろうか?

どうしよう?

ジーンズにニットという格好のまま、髪だけアップに結い上げて、
連絡を迷っていると、また、携帯が鳴った。

藤堂くんだ!

もしかして、藤堂くんも行けなくなてしまったの?

心臓が早くなる。

「もしもし、ユーコ?今日の初詣なんだけど……」

そら、きた。

せっかく髪、アップにしたのに。

ちょっと涙が出そうになる。

「高木も中野もなんか都合が悪くなっちゃったらしいんだ。
男は俺だけって、ユーコたちイヤか?」

「え?ぜんぜん!イヤなんかじゃないよ!藤堂くんだけで十分!」

思わず本音を叫んだ後ではっとして、慌ててコチラの事情も伝えた。

「でも、えっと、実は、リエと玲菜も行けなくなってしまったって……」

「まじ!?」

驚いた声の藤堂くんが、次に発するであろう言葉を、
死刑宣告を受ける気分で待った。

「じゃあさ、二人で行くか?」

「え゛!?」

思いがけない藤堂くんの台詞に、思わず漏れた自分の声には
「え」にてんてんが付いていた。

「二人はイヤか?」

「ううん!ヤじゃない!!」

むしろ、嬉しい!という言葉をぐっと飲み込んで、夢見心地で電話を切った。

時刻は21時。

藤堂くんと会って、二人きりで初詣に行く23時が待ち遠しい。

きっと、これからの2時間は、この一年で一番長く感じられる2時間で、
それからの時間は、飛ぶようにはやく過ぎていくに違いない。