彼女のショッピングに付き合う約束だったのを忘れて、
ダチと遊びに行ってた渋谷で、彼女にばったり会ってしまった。

運の悪いことに、さっき合流したダチの仲間の女の子たちも一緒だった。

「遼くん!」

目を見開いて、かなり怒った顔の彼女が続けた言葉は、俺にとって致命的だった。

「遼くんの…… 嘘つき!!」

あ~れ~~~~~~~~~~~。

“嘘つき”

この言葉を言われると、俺は時間を遡る。

「まだ嘘をついていない時間」まで遡って、もう一度やり直さなくてはいけなくなるのだ。

なぜそうなってしまったのかは分からない。

しかし、それは俺にとって、どう抗っても逃げられない現実。

もう何度くらいやり直しをさせられただろう?

15,6回目からは、数えるのも嫌になった。

今回の人生では、せっかく高校生まで成長することができたのに……。

「ちぇ!ショッピングの約束は、嘘ついたわけじゃなくてちょっと忘れてただけじゃないか。」

俺はそう文句を言ったが、すでに時間は遡っていて、
赤ん坊に戻った俺の言葉は「オギャー、オギャー」という泣き声でしかなかった。


このショートストーリーは、大阪の時計店【ウオッチコレ】メールマガジン『ブリリアントタイム』に掲載されています。