パシャ!

カメラのフラッシュを向けられたように、強い光が目の前をふさぎ、
突然、何も見えなくなった。

今、目の前に広がっているのは、ひたすら明るい真っ白な世界。

いったい何が起こったのだろう?

意識が少し混乱している。

これまで見えていたものが、今は何一つ見えない。

今まで傍にいたはずの人もみんないなくなってしまって、
さっきまで聞こえていた話し声も何一つ聞こえなくなった。

私はいったい、どうすればいいのだろう?

「誰か、助けて!」

そう叫ぼうとしたけれど、声が上手く出せない。

こんな真っ白な光の世界に、一人ぼっちで取り残されて、
これからどうやって生きていけば……

不安がこみあげてきて、涙が出そうになったとき、
聞き覚えのある声が聞こえた。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!……お姉ちゃん、朝よ!」

その声が妹の声だと分かったのと同時に、
自分がいる場所がベッドの上であることも思いだした。

「お姉ちゃん、その新しい目ざまし時計、使うのやめたほうがいいんじゃない?
毎朝そんなに引きつった顔で起きるのはどうかと思うわ」

そう、先週買ったばかりの最新フラッシュ式目ざまし時計は、
音ではなく光で目を覚まさせるシステムなのだが、
私にはあまり向いていなかったかもしれない……


このショートストーリーは、大阪の時計店【ウオッチコレ】メールマガジン『ブリリアントタイム』に掲載されています。