その日は毎年恒例の報告会で、全国各地区のリーダーが一堂に会した。

「えー、では、まず、昨年の報告からお願いします」

司会者が告げると、成績トップ地区のリーダーが立ち上がった。

「はい、私たちの昨年の達成率は75.2%で、一昨年に引き続き大変好調です」

トップ地区のリーダーは、誇らし気に好調な状況の詳細を話し、
今年は目標達成率を90%に引き上げると豪語して会場をざわつかせた。

次に報告した成績2番手のリーダーも、優秀地区常連の余裕を見せながら
昨年の反省と今年の目標を語った。

成績順に報告が進む中、肩身が狭そうにしていたのは、
最下位争いをしている地区のリーダー達だ。

最下位地区のリーダーは、トップ地区の半分にも満たない達成率を、
申し訳なさそうに報告した。

全ての報告が終了すると、お決まりの訓示があり、
「えいえいおーっ!」と全員で勝鬨の声を上げて、報告会は終了した。

ここからは皆が楽しみにしていた新年会だ。

日頃なかなか会えない仲間とも、この日ばかりは一緒に飲んで語り合える。

「目標達成って言ってもさ、なかなか厳しいんだよなぁ」

最下位争いをしていた地区のリーダーが日本酒をグイっと飲み干していった。

「そうそう、俺たちがいくら頑張ったところでどうにもならないことも多いしなぁ」

なんとか最下位を免れた地区のリーダーが、スルメを噛みながら言った。

「やあ!君たち飲んでるかい?」

すでに出来上がっている様子のトップ地区リーダーがやってきて、上機嫌な声で言った。

「君たちは、簡単な案件から処理しようとして、案件を選んでるんじゃないか?」

トップ地区のリーダーは機嫌の良い声のまま話を続けた。

「簡単な案件から手を付けた方が早く成果を出せると思っているかもしれないが、
実はそうじゃないんだよなぁ。
なぜだかわかるかい? 選ぶ時間がロスになるからだよ。
じゃあ、どうするのか? 内容なんて確かめないで、片っ端から対応していくのさ。
そりゃあ、中にはややこしい案件や、とんでもない案件もあるけれど、
それはそれで、成就させる手ごたえを楽しめばいい」

成績トップ地区のリーダーともなると、ややこしい案件でさえ楽しめるのかと
最下位争いリーダーたちは驚きながら話を聞いた。

しかし、トップ地区のリーダーの話にも一理あるかもしれないなぁ、
今年は彼を真似てみよう。

最下位地区のリーダーは素直にそう考えた。

彼らは皆、元来素直で、前向きな性質なのだ。

トップ地区のリーダーに、仕事のやり方をさらに詳しく聞いた最下位争いリーダーたちは、
地元に帰って部下たちに、去年とは違う指導をしようと考えていた。

リーダーたちの地元では、松の内の間に集まった
あふれんばかりの“願い事”が山積みになっていた。

もちろん、中にはややこしい願い事や、とんでもない願い事もたくさんある。

去年は避けていたそれらの願い事を叶える手助けも、今年は片っ端からやっていくことにした。

新年会から戻った神様のリーダーたちは、今、おおいにやる気になっている。

今年初詣に出かけた人間は、どんでもない願い事を叶えられるかもしれない。