2度目のデートに、買ったばかりの白いワンピースを着て出かけた。

待ち合わせの駅に着くと、改札の奥から向こうにいる彼の姿が見えて、
傍まで急いで走って行った。

彼は、息を切らしている私の姿を見ると、

「慌てなくていいのに」

と笑った後、まるで独り言のように言った。

「白も良いね」

私はタイミングを逃してしまって、何も答えられなかったけれど、
その日は1日中最高の気分だった。

彼が、「白が良い」でも、「白は良い」でもなく、
「白も良い」と言ってくれたから。

彼に「白」の他にも良いと思われている“何か”があるのだと思うと、
それを分からせてくれた「も」という文字が、輝く宝石にさえ感じられた。

3度目のデートのとき。

散歩途中の子犬が愛くるしい仕草をしているので、

「可愛いね?」

って彼に言うと、

「うん、子犬も可愛いけど……」

返事の語尾は、私の目を見詰めたままはにかんだような笑顔の向こうに消えてしまった。

でも、音になっていない部分の言葉を、「も」がちゃんと教えてくれていて、
私はその日もまた、とても幸せな気分だった。