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  1. ショートストーリー

時そば2018

昔、二八そばとか夜鷹そばとか言って、往来を流して売っていた頃のお噺。

男がそば屋を呼び止めてそばを食い、さんざんそば屋にお世辞を言って、
代金を払う時にこう言った。

「いくらだ? 十六文か、それじゃ、銭がこまかいよ。
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ…… 今なんどきだ?」

そば屋は反射的にこう答える。

「はい、9つで」

男はすかさず続けて、

「とぉ、11、12、・・・・・・・はい16文」

と、うまく一文ごまかしてしまった。

それを見ていた少し足りない男が自分もやってみようと、
次の日、細かい銭を用意してそばを食った。

勘定になって、先の男と同じように

「いくらだ、十六文か、それじゃ、銭がこまかいよ。
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ」

「今なんどきだ?」

「はい、4つで……」

足りない男はそのまま続けて、

「5つ、6つ、7つ、・・・・・・・・・・」

半べそをかいて銭を払う足りない男を見ていた先の男は、
その翌日もう一度、別のそば屋を呼びとめた。

勘定になると、前と同じように小銭を出してこう言った。

「いくらだ? 十六文か、それじゃ、銭がこまかいよ。
1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ…… 今なんどきだ?」

「へい」と返事をしたそば屋は、心得たとばかりに男の前に腕を出し、
太い手首に輝く自慢のロレックスを見せた。

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