「この映画、イマイチだったよね」
外に出ると同時に、女が言った。
「一番イイいところをみんな予告で見せちゃってたからな。
でも、仕方ないさ、そうしなくちゃチケットが売れないんだから」
よくあることさという調子で、男が答えた。
しかし、この男の言葉を聞いて、女は少し不安になった。
男が先日、女に指輪を差し出して話した人生の“予告編”が、
もし、これから始まる結婚生活の一番イイところだったとしたら……。
左手のリングを見詰めながら、女が黙り込んでしまった理由に、
のん気な男は、まだ、気づいていない。