ああ、どうしよう? 時間が足りない。

俺は難解な問題に取り組みながら、左腕の時計を確認した。

あと3分…… いや、せめて2分……。

平静を装ってチェックしながら、服の中にはじっとりと嫌な汗をかいていた。

タイムリミットが迫っていた。

心臓がバクバク鳴っている。
隣に音が聞こえないかと心配になった。

その時、奥の椅子で何か読んでいた彼女が顔をあげて時計を見た。

もうダメだ、“終了”を告げられる!

と思ったその時、やっと会計が済んで店の外に出ることができた。

まさか、ここに妻がいるなんて。

こんな店に女連れでいるところを嫉妬深い妻に見つかったら、
夫婦生活は終了だし、女には妻がいることを教えていない。

会計の遅い店員にはイラついたが、
とにかく、間にあって良かった……。