「宇宙から見た地球は本当に綺麗だよ。
深い緑色に輝いて……まるでエメラルドみたいだね。」

このセリフを、俺はもう何度口にした事だろう?

バーで女を落とす時には面白いほど良く効くセリフだ。

ずいぶん開発が進み、以前よりはずっと身近になった宇宙だが、
一般人で宇宙と地球を行き来できる人間は、まだほんの一部の選ばれた者だけだ。

宇宙ステーションに出張していることを匂わせれば、
他には何も言わなくても、自分が超エリートだということを、
女にわからせることができる。

このセリフを聞いた女は、やがて俺の肩にしなだれかかり……

俺は横にいる女の顔をチラリと見やった。

え?

いつもならば、女はじきに俺の肩にしなだれかかってくるはずなのに……

「まあ!あなたもステーションに行ってたの?
私も先週行ってきたところよ。
でも、地球がエメラルドっていうのはちょっと言い過ぎね。
それに……」

ちぇっ。こいつも同じエリートか。

なんで最近の女はこう優秀な奴が多いのかね。

俺より優秀な男はほとんどいないというのに、
俺よりデキる女はどんどん増えているのだから、
なんともやりにくい時代になったな。


このショートストーリーは、大阪の時計店【ウオッチコレ】メールマガジン『ブリリアントタイム』に掲載されています。