こういうのをグループデート、といでもいうのだろうか。
先週末、ふうこが初めて出席した合コンで、息投合した男の子たちと休日にドライブをすることが決まった。
男3人、女4人。
数があっていないのが気になる。
ふうこは、4人の中で一番地味で目立たない。
男の子たちが運転する3台の車の中で、自分だけが後部座席に座っているところを想像して、少し憂鬱になった。
でも、約束してしまったのだから仕方ない。
母は、これまでデートなんてしたことの無い私の報告にとても喜んでいるし、当日のドタキャンは良くないと思うし、それに、やっぱり、あの高司くんともう一度会えるのは嬉しい。
後部座席でも充分ではないか。
「行ってきます」
心を決めて玄関を出ようとしたふうこを母が呼び止めた。
「せっかく男の子達とドライブに行くっていうのに、そんなに地味な格好じゃいけないわ!せめてこれを着けて行きなさい」
母が強引に手渡したのは、鮮やかなターコイズのネックレス。
「こんな色のを着けるの?」
「私が若い頃使ってたものよ、あなたにもきっと似合うはずだから。それにね、ターコイズの宝石言葉は“希望”っていうの。
お守りだと思ってしていきなさい」
「希望……か」
ふうこは少し気後れしながらもそのネックレスを着けて出かけた。
明るく可愛い女の子たちと、お喋り上手な男の子たちのおかげで、ドライブは楽しかった。
ふうこが乗ったのは、あの、高司くんの車だったし。
もちろん、後部座席だったけれど。
陽が傾き始めた頃、ふうこたちの車は川沿いの道を走っていた。
川岸に咲いた菜の花の絨毯があまりに綺麗たったものだから、ふうこは思わず小さな声をあげた。
「わあ、綺麗!」
「少し、降りてみる?」
高司くんがそう言って、他の車に合図をすると、車を止めて皆で川岸に降りた。
夕日で染まったコーラルオレンジの空を背景に、黄色い菜の花がどこまでも広がっている。
目を輝かせて景色を見ながら、綺麗な色を吸い込むみたいに大きく深呼吸したふうこの耳元で、高司君が囁いた。
「君の携帯番号教えてくれないかな?今度は二人だけで会いたいんだ」
「え?」
驚いて振り返ったふうこの胸元で、鮮やかなターコイズブルーがキラリと光った。