ボクは、ももたん。

桃色子豚のぬいぐるみだよ。

ここは奈々子ちゃんの部屋で、ボクは奈々子ちゃんと一緒に暮らしてるんだ。

奈々子ちゃんは天使みたいに可愛い女の子なんだ。

それに、ボクのことを誰よりも大切にしてくれている。

大人になってからも、こうしてずっと。

だから、ボクは、奈々子ちゃんが大好きなんだ!

奈々子ちゃんの笑顔を見るためだったら、どんなことだってしたい!

でも…… ぼくはこんなに小さくて、ひとりで動くこともできない。

だから、奈々子ちゃんが泣いているとき、髪を優しく撫でるのは、
あの背の高いオットっていう奴なんだ。

もしもボクがオットと同じくらい大きかったら……
何度もそんなふうに考えたけど、仕方ないよね。

それに、オットが髪を撫でると奈々子ちゃんの涙が止まるから、
ボクもオットのことを嫌いにはなれない。

でもね。

奈々子ちゃんには内緒だけれど、ボクはちょっとした魔法が使えるんだ。

たとえば、奈々子ちゃんのアイスクリームの棒を“あたり”にすることができる。

それに、奈々子ちゃんが好きなドラマの録画を忘れないよう、気づかせてあげることもできる

それから、奈々子ちゃんが大事にしているサボテンに花を咲かせることだってできる。

奈々子ちゃんは、“あたり”の文字を見たときも、録画のドラマを観るときも、
サボテンの花に「おはよう」と言うときも、とっても嬉しそうに、にっこりと笑うんだ。

それはそれは可愛い、天使のような笑顔で。

ボクの体は小さくて、大きな魔法は使えないし、
髪を撫でてあげることもできないけれど、
奈々子ちゃんがいつも笑顔でいてくれるなら、それで十分幸せさ。

ボクはももたん。

奈々子ちゃんの笑顔が大好きな桃色子豚のぬいぐるみ。