「明けましておめでとう!それから、お誕生日おめでとう!」
「……」
「どうしたんだい?」
「今頃、なによ……」
「そうだね、ちょっと遅いよね……」
「ちょっとどころじゃないわよ、何日だと思ってるのよ!?
それに、ちっともおめでたくなんかないわよっ!人の気も知らないで!!」
「ごめんね、もう少し早く来たかったんだけど、
お正月はやっぱり出づらくて……」
「クリスマスのデートだってざるそばとか食べてたし、
これまで季節感なんて全然気にしなかったくせに、
都合のいい時だけそんなこと言って!」
「ね、もう機嫌直してよ?」
「……」
「ねえってばさぁ。……よーし、それなら……」
「……キャハッ。キャ。ハハ、ハハハハハ!アハハハハ!
ずるいわよ、くすぐるなんて!」
「やっぱり笑った方がかわいいよ。ほら、涙を拭いて。
……あれ?その時計……僕が隠しておいたプレゼント、見つけたの?」
「あんなところに隠してあったら誰でもすぐ見つけちゃうわよ!
もう少し他に考えられなかったの?本当にもう……
あなたって、頭いいくせに抜けてるんだから」
「ごめん、でも、見つけてくれて良かったよ」
「ちっとも良くなんかないわよ!
……あなたから渡してほしかったに決まってるじゃない!
どうして……うっ……。」
時計をつけたまま眠る君を、僕はずっと見つめている。
もし、今君に声をかけたら、こんな会話になるんじゃないかって想像しながら。
起きている時は怒ったり笑ったり泣いたり忙しい君だけど、
眠っているときはおとなしくて可愛い。
もっとも僕は、起きている君も眠っている君も、
同じくらい愛してるけど。
誕生日がお正月だと、一緒にされて損した気分だって言ってたから
これからはちゃんと別々にお祝いするつもりだったのに、
こんなことになっちゃってごめんね。
本当はずっと、君のことを見守っていたいよ。
でも、もういかなくちゃ。
だから、せめて、君と一緒に過ごすはずだった
50年分の「おめでとう!」を、今のうちに言っておくよ。
大好きな君が、僕がいなくても幸せでありますように。
おめでとう!おめでとう!おめでとう!おめでとう!おめでと……
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