窓ガラスから差し込む西日で、夕暮れが近いことに気がついた。

今日も、あなたは来てくれなかった。

朝からずっと、あなただけを待っていたのに……。
あなたと一緒に過ごさなくなって、もうどれくらい経つだろう?
あなたは他の誰かといても、よく私を気にしてくた。

その優しい目で私を見つめて、私が小さく微笑み返すと、

安心したようにまた誰かとの会話に戻っていたっけ。

あんまり私ばかりを見たら、その人に悪いわよ、って

すました表情のままでいたけれど、本当はそんなあなたの仕草が

たまらなく嬉しかった。
ね、覚えてる?私たちが出会った時のこと。
あなたは私のことを見るなり、驚いたような顔をして、

「ずっと探してた」

って言ったのよ。

私たちが出会ったことは、運命だったってわかったわ。
初めて一緒に出かけた映画は、ストーリーさえ思い出せない。

あなたのたくましい腕に寄り添って、愛しい横顔ばかりを見てたから。
どこに行くときも一緒だったわね。

幸せな二人の時間は、いつまでも続くと信じてた。
それなのに、こんな日がくるなんて……

あなたに悪気が無いことはわかってる。

でも、こんなふうに放って置かれるくらいなら、

いっそ、捨てられてしまいたかった。
もう一度あなたの腕に顔を寄せて、私の鼓動を伝えることが出来たなら……

もしも、「愛しています」とあなたに伝える術があるなら……

*********
「貴史、遅くなってごめん!どれくらい待った?」
「えっと、5分くらいかな?時計見てないからわからないや」
「そういえば、貴史、最近あの時計着けてないわね?」
「そうだな、あれ、けっこー重かったんだよ。時間なら携帯でも見られるし」
「相変わらず飽きっぽいのね。あの時計を一緒に見つけた時には、

『これ、ずっと探してたんだ』なんて感激しながら買っていたのに……」

 

このショートストーリーを掲載のウオッチコレメールマガジン「ブリリアントタイム」は、
隔週金曜配信です♪