「しっ!」
突飛な話に驚いて大きな声を出した私を、彼は短く嗜めた。
「だって、そんなお話、信じる方がおかしいわ」
私は、彼がふざけているのだと思って、笑いながらそう言った。
それでも彼は真顔で続ける。
「無理に信じろとは言わないけれど、本当だよ。
だから、もし、奴らに聞かれたら危険なんだ。
お願いだから、声を落として」
トパーズを思わせる琥珀色の瞳に見詰められると、
そのむちゃくちゃなお話も真実に違いないと思えてくるから不思議だ。
なにより、私はこんなに彼を愛しているのだし、
彼にもしものことがあったらと思うと胸が痛くなる。
トパーズの瞳に魅入られたまま、私はそっとバッグを開いて、
お財布を取り出した。
「……で、またお金渡しちゃったの?
「そいつの瞳がトパーズだかダイヤモンドだかしらないけれど、
そんな嘘にひっかかるって、あんたどうかしてるわよ!
だいたいね、人間に成りすまして地球侵略しようとしている宇宙人に
命を狙われてるから、逃げるためのお金がいるって、どういうことよ?
第一、あんたが貸せる程度のお金でどこに逃げられるっていうのよ!
ったく……」
「だって……」
叱られてべそをかきながらも、私はまだ、彼の瞳に嘘はなかったと、
心のどこかで信じていた。
「ドウダッタ?」
「オーケーダ。 スベテ ケイカクドウリ」
「ソウカ。 チキュウ ノ ;オンナガ ホウセキ ニ ;ヨワイ トイウノハ ホントウナンダナ」
「カネ ガナイト ウチュウセン モ ナオセナイ ナンテ チキュウ ;トハ ;フベン ナ トコロ ダナ」
「アア。 ハヤク フネヲ シュウリ シテ ホシ 二 カエロウ」
そう言って人間の皮を脱ぎ捨てた宇宙人は、
美しい2つのトパーズを瞳から取り外して、大切そうに箱にしまった。