博士と助手は静かに喜びをかみしめていた。
人生をかけた研究が、今まさに実を結ぼうとしているのだ。
博士が手にしているのは、人を若返らせたり成長させたりできるキャンディだ。
幼い頃、漫画好きだった博士は、小さなキャンディを食べた少女が
大人になったり赤ん坊になったりする漫画を見て、
いつか自分もそんなキャンディを作りたいと考えたのだった。
努力をたくさん積み重ね、長い年月を費やして、
ようやく、このキャンディを完成させた。
博士は早速、自分たちで試してみようと、
食べると10歳若返るキャンディを、弟子に手渡し、
食べると10歳成長するキャンディを自分の口に放り込んだ。
キャンディはとても美味しくできており、2人はしばらく味わってから
ポリポリとかみ砕いて飲み込んだ。
すると……
弟子は、少し体が楽になったように感じたものの、
鏡を覗いて顔を見ても、大きな変化は見つけられなかった。
ところが、博士の方はというと、
うっと小さく呻いたきり、目を閉じて動かなくなってしまった。
「博士!博士!!」
弟子は、博士をゆすって泣きながら、2人の研究は失敗に終わったのだと考えた。
しかし、実際のところ研究は大成功で、
キャンディはちゃんと2人を若返らせたり成長させたりしていたのだ。
ただ、研究に没頭しすぎた2人の年齢は、すでに85歳と86歳だっため、
2人はその大成功に気づくことができなかった。