「……ごめんね、他に好きな子がいるんだ」
彼の答えはノーだった。
頬がカッと熱くなる。
うっと涙が込み上げてきて、思わず駆けだしていた。
キキーッ!ドンッ!!
山下さん!山下さん!!山下……
「やましたぁ~!」
ハッと目を開けると、そこは教室。
担任の河村が私の顔を覗き込んでいた。
「気持ち良く寝ているところを申し訳ないが、起きてここを読んでくれ」
「は、はい!」
慌てて立ち上がり、教科書を読み上げる。
そっか、ここはあの日の教室。
また、戻ってしまったんだ。
事の発端は、先月。
クラス替えで、中学時代から気になっていた彼と同じクラスになった。
気持ちは日に日に募っていって、何も手につかなくなった。
友人に頼んで彼を呼び出してもらい、勇気を出して告白した。
「あなたがずっと好きでした。お付き合いしてください」
LINEではなく、ちゃんと言葉で伝えたかった。
けれど、言いづらそうに口を開いた彼の返事は、ノー。
私は思わず駆けだして、トラックが走ってくる道路に飛び出してしまった。
耳をつんざくブレーキ音の中で、強い衝撃を感じた次の瞬間……
私はクラス替えして間もない教室の席に居た。
さっき彼に告白したのとは、別のクラスメイトになって。
これで11回目。
彼が好きなのは、山下さんでもないようだ。
クラスの女子は残り9人。
あと9回繰り返すうちに、彼からイエスがもらえるはずだ。
……でも、待って。
もしも彼が好きなのが別のクラスの女子だとしたら……?
別の学校の誰かだとしたら……?
ううん、それだってかまわない!
彼が笑顔でイエスと言うまで、私は何度でも告白する。