パラリ。
そう音がしたような気がした。
「人生には、新しいページをめくるような日がある」
と、昔、仲の良かった先輩が言っていた。
それは、田舎の町で子供たちに絵を教えていた先輩が、
地球の反対側にある、電気も水道も通っていない、
初めて聞く名前の国へ、旅立つ前に言った言葉。
先輩が、「落ち着いたら送るから」と言った手紙は、
3年経った今もまだ届かない。
けれど、1日1往復しかしない電車を降りてから、
トラックで2時間走り、そこからさらに何時間か歩いて……
なんて場所に行くのだと聞かされていたから、
それも仕方無いことだと思う。
どうして、そんな道を選ぶのだろう?
と、あの頃は不思議で仕方なかったけれど、
今は、先輩の気持ちが少しわかる気がする。
だって、今、私も、あのパラリという音を、
ハッキリと聞いてしまったから。
そして、私は、他人が聞いたら「なぜ?」と首をかしげるに違いないその申し出に、
「はい」と力強く応え、これからの人生を一緒に歩くことになるその人の手を取った。
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