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明日のわたし

2018/01/15

未来が分かるとか、未来が見える、というわけではないのだけれど、
私には、明日の自分に関するちょっとした予知能力がある。

始まりは幼稚園の頃のこと。

運動会の前の夜、ぐっすりと眠っているとどこからともなく声が聞こえた。

「転んでもすぐ起きて走れば一番になれる」

当日は、本当に、スタートしてすぐ転んでしまい、
泣き出しそうになったときにあの声を思い出した。

慌てて起きて走り出し、1人目を追い抜いたところで、
前を走る子の靴が脱げた。

それでも1番の子を抜くのは無理だと思ったら、
なんと、その子がゴール目前で転んだのだ。

結局、私は、夜中に聞いた声の通り、転んでも1番になった。

その後も、発表会の前の日だとか、友達とけんかしてしまった夜だとか、
明日のことを心配しながら眠りについた夜には必ず、
どこからともなく声が聞こえて、どうするべきかを示してくれた。

いつしか私は、その声の主は、「明日のわたし」だと信じるようになった。

あ、もうこんな時間……

明日は大事な初デートなのに、夜更かししてはお肌に悪い。

でも、何を着ていけばいいんだろう?
やっぱりスカートのがいいかな?
髪の毛はどうしよう?
先輩、お化粧する子はきらいかな?でも、リップくらいは……
うーん……どうしよう?

「先月買ったスカートがかわいいわよ、
明日は暑くなるから髪はポニーテールで、
あなたはかわいいんだから、お化粧なんていらないわ。
でも、ピンクのリップだけならいいかもしれない」

娘はときどきうなされながら、はっきりとした寝言を言う。

幼稚園の頃、一度寝言に答えてやったら、安心した顔で眠ったので、
それからもつい、答えてしまうようになった。

でも、娘ももう中学生だし、
そろそろ寝言に返事するのはやめないといけないかしら?


このショートストーリーは、大阪の時計店【ウオッチコレ】メールマガジン『ブリリアントタイム』に掲載されています。